わが名をよびてたまはれ
だんでらいおん
過去生のその人の姿を、ただ見つめていました。
ふわっとスカートの裾を広げてベッドの端に腰をかけ、その人はおだやかな表情で、話し続ける病人の言葉を聞いていました。
相手が言葉に詰まって迷う表情になると、
「そうなんですね」と、やさしく言葉を重ね、
疲れて黙ると、ただじっと手を握って、静かに流れる時間を共に過ごしている、その人・・
家族ではなく、友人ではなく、看護士でもないその人のことをどう説明して良いか分からなくて、
「命を終えていく人のそばに、やさしく付き添う人」
そう伝えました。
ある日の過去生ヒーリングでした。
座っている その人の中には、今のその人とよく似た
凛とした美しい女性の姿がありました。
「わかります」と、その人は言われました。
「とても気になる光景があります。同じです」
そして後日、一冊の本を届けてくださいました。
それが先日、ご紹介しかけていた
『死にゆく者からの言葉』
鈴木 秀子著 文春文庫 です
著者の鈴木秀子さんは、ご自身の臨死体験をきっかけに、
『不思議というより、摂理としか思えない方法で重症の病人のところへ招かれるようになり』人生の最後の時間に付き添われるようになられた方です。
『死にゆく人たちは死の迫っていることを知っている。
残された日々に、自分の人生を振り返り、
自分の人生の意味を見つけ、あるいは未解決のものを解決し、
不和を和解に、より豊かな愛の結びつきにすることを望んでいる』
それは私が思ってきた、命の終わりの時に、
「ああ、いい人生だった」と思ってもらいたい、というような傲慢なものではなく、
『あるがままの内面・・体験、みずから語る話を聞き手の誰かに受け入れてもらうことが、死にゆく人にとって最も大きな、人生最後の仕事となる』
と言える、聞き手の心の姿勢。
そしてその本の中にあった『山のおじいさん』の話は、忘れられないものになりました。
記憶がないまま山中で保護されて、施設で過ごすことになった一人の老人。
八方手をつくしても身よりが分からず、その人の名前も分からず、
ただ『山のおじいさん』と呼ばれていた その人が、最後の時に、
能舞台をわたって響いてくる謡いのように、朗々とうたいあげたと言われるのです。
あはれいまひとたび
わがいとけなき日の名を
よびてたまはれ
風のふく日のとほくより
わが名をよびてたまはれ
庭のかたへに茶の花のさきのこる日の
ちらちらと雪のふる日のとほくより
わが名をよびてたまはれ
よびてたまはれ
わが名をよびてたまはれ
幼き日
母のよびたまひしわが名もて
われをよびてたまはれ
われをよびてたまはれ
(三好 達治)
その本を何度も読みました。
その本を私に渡してくださった方の中にあった同じ過去生の姿。
自分がいかに不遜であったか・・思い知らされた出会いでした。
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