大切だと……伝えておけばよかった……
だんでらいおん
元は彼のお母さんからの依頼でした。
お節介が頭をもたげて、やさぐれた感じの彼のことが気にかかってしまいました。
生きることを投げてしまっているようなその人に、何とか気力を取り戻してもらいたい、と 用事を作っては訪ねました。
不機嫌には気づかないふり。
笑顔で声のトーンを明るく、と心がけて向き合いました。
やがて少しずつ心を開いてもらえるようになって、お互いの夢を語るようにもなっていたのですが……
親しくなると、気ムラな彼の言動に私の方が疲れるようになってきました。
昨日はあんなに親しく話したのに……と、こちらが混乱するくらい翌日は別人のような対応で……その態度に傷つき、心が萎えていきました。
距離をとるようになって半年近く。
突然、訃報が届きました。
荒れた生活に身体がボロボロになっていたのでしょうか…… あっけない死でした。
なぜ最後まで関わらなかったのか……悔やみました。勝手に近づいて、勝手に離れて…… 私は何ということをしたのかと、悔やんでも悔やんでも悔やみきれない死でした。
どんな思いで死んでいったのか……思いきって彼の言葉を聞いてみようとした時。ふいに彼の笑顔が浮かびました。
「何も思ってなんかないよ」
と、言われているようでした。
彼を引っぱり出そうとしたこと。
夢を実現するためにチームを作ろうとしたこと。
彼には楽しい時間だったのだと思えました。
ただ、現実に戻ってくるには身体が傷みすぎていました。
傷ついた人が再びかすかな希望を持った時。激しく試し行動に出られる時があります。
この人間は裏切ることはないだろうか。去って行くことはないだろうか、と。
そこを真っ直ぐ好意を見せ続けたら、未来は変わったのかもしれません……
生涯、忘れることのできない、大きな悔いの残る別れでした。
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