整体では主に、2つの操法を使います。
ひとつは愉気、もうひとつは前回お話ししました、呼吸の間隙に、押し、抜き、止めるというやり方です。
呼吸は、吐く時には筋肉が緩み、吸う時は緊張します。また手足を上げる時は吸い、下げる時には吐きます。皆さんラジオ体操ではそうやっていると思います。それが自然なのです。
整体の場合、最も重要なのは、吐きから吸いに移る、そのわずかな間です。一瞬止まったようなその空間はまったく無防備な状態です。
骨というものは簡単に動くものではありませんが、この間を利用すると簡単に動くのです。
だからその空間でエイ！ヤッ！と力を入れてやると、大変なことになってしまう。ほんのチョイ押しでいいんです。二宮先生はよく整体に必要な力は小指1本の力だと仰っていましたが、そういうことなんです。
私はこの間は、真であり、魔であると思っています。たいがいギックリ腰はこの間（魔）の空間に重いものを持った時、ギクッとやるのです。
西洋では、ギックリ腰のことを「魔女のひとつき」と言いますが、うまく言ったものだなと、思いましたね。また野口先生は「息を吸いながら物を持ちあげると、ギックリ腰は90％防げる」と、確か仰っていたと思います。
この間の空間は、まったく無防備な状態だと言いましたが、ボクシングなんかでも、この一瞬呼吸が止まった時にガツンとやられると、いとも簡単に倒れてしまいます。
私は、昔ボクシングの世界チャンピオンだった長谷川穂積選手の試合を見るたびに、この人は愛ての呼吸を読んでやっていると思いましたね。井上尚弥選手もそうですけど。
まぁ、ボクシングだけでなく、武道の達人の方たちも、そうですけどね。
相手の呼吸を読んでいる。整体も同じですけど。

続く